パーカッションのルネサンス 18

パーカッションのルネサンス
打楽器奏者の目から見た今日の音楽と音楽教育 —— 連載第18回
・「赤とんぼ」と「この道」をうたうコツ

有賀誠門(打楽器奏者)

 日本の社会的儀礼の典型的な形は、頭を前に垂れる御辞儀(おじぎ)です。「おはようございます」「こんにちは」「ありがとうございます」等々。これは上から下への運動で腰を引くため、後方へのエネルギーを表わしています。息を吸い上げるエネルギー運動とは反対の「吐く」力がより強く働いています。

 この運動行為が日常行なわれているため、無意識にあらゆる行動にその運動の痕跡がのぞいているわけです。よほど気をつけないとわからないと思います。たとえば、数を数えるとき、

 と「うなずく」運動リズムに気づいたと思います。何回も後方に腰を動かすには膝を曲げた方がやりやすいのです。

 この感覚は、日本の年配の女性に多くみられますが、買物袋などいくつも、手に持つのではなく、ひじに掛けて歩いています。手は子どものように握っているのです。手でしっかり物をつかむ、握るという積極姿勢がみえません。体の末端へのエネルギーが足りないため、立った姿でも何かしら弱さを感じます。前に出る(進む)時には腰から前に移動し、足が振り出されるのです。前にjumpする姿勢をみれば一目瞭然です。この感覚で

と重力に逆らいUpするのです。

 この動きは「波の動き」――寄せて、引くと同じなのです。

さてステップを踏んでみましょう!!

と交互に進めましたか?

 次は右足から進めて下さい。腰の移動がカギです。足はすっと格好よく、前、横と出して下さい。これができるようになり、feelingがわかりましたら

 「ランラーーラランラン」と歌ってみて下さい。このリズム形は西洋音楽の「サラバンド」のリズムです。あらゆるところに出てきますからよくおぼえておいて下さい。山田耕筰作曲『赤とんぼ』をみてみましょう。

ゆうやけ 小やけの 赤とんぼ

「ゆうやけ」の「ゆう」に前に押し進める力を読み、「や」にかけて下さい。

が重要です。「小やけ」の「こや・・・」に力を感じて下さい。「赤とんぼ」の「あ」と「と」に力を読み、「ん」はUpで「ぼ」につなげる。

 「おわ」をはっきり音程をとり「れ」にかけ、3拍目の力を読み

とつなげる。「いつ」の「い」をはっきり発音し「いつ」でリズムをきめて下さい。3拍目をUp感覚で歌うと、とても良くなるはずです。

ピアノの右手のリズム形は

と、各拍が二つの音を持ち、E♭-B♭と音程差も積極的な運動(前輪駆動形)をするようになっています。非常に駆動力があり、大きな音楽であることがおわかりでしょう。リズム形が

なのです。「うなずき運動」でない方が大きく、開かれた音楽になります。同じようにして「この道」を研究してみて下さい。積極姿勢の中に「過去」をふりかえる。リズム形が

に気づかれたことでしょう。

(1994.4)