パーカッションのルネサンス 40

打楽器奏者の目から見た今日の音楽と音楽教育 —— 連載第40回
•「ノーベンバーステップス」のリズムとテンポ

有賀 誠門(打楽器奏者)

<November Steps>の全体の流れを見てみますと「静」が支配していることが分かります。躍動感のあるテンポがみえません。

しかし、リズム形をみてみますと、1:2、1:3、1:4、1:5とありますが、シンコペーションが非常に多くみえます。このシンコペーションを活かすには、速度ははやくはありませんがカウント感をもたせることがとても重要なのです。指揮者はもちろんのこと、各奏者のリズム感によりこの作品はかなり変わることになります。Down感覚のカウント感によるシンコペーションは、引きずった何とも耐え難いものになります。さらにトーンクラスターが多いため、このトーンクラスターもDown感覚で演奏しますとSoundがクリアにならず、べたーとした不快な響きとして出てきます。

オーケストラはバルトークの「弦楽器とチェレスタ、打楽器の為の音楽」と同様に弦楽器群が二分され、それぞれにハープ、打楽器が加えられています。木管群と金管群は中央に位置されます。

冒頭5小節のリズム形をみてみましょう。(譜例1、2)

=120ですから、行進のテンポです。チョン、スー、チョン、スー・・・で指揮をしてみて下さい。身体の中から湧き上がってくるビートがあれば申し分ありません。60=♪に移すことが出来ましたか?ゆっくりなテンポでもDownの感覚ではなくなりましたか?60=♪で各セクションのリズム形を口三味線で歌い上げてみて下さい。

タ、タ、タでは↓、↓、↓となりますから、↑、↑、↑になるよう、ラ↑ラ↑ラ↑なりタ↑タ↑タ↑と、舌が歯茎から離れる瞬間を十分意識し、注意し、なめ上げ運動で歌い上げて下さい。すべての音を、まずUPで歌うことです。その感覚が十分に感覚しうるようになったら、UP感覚でDOWNができるように訓練してください。UP感覚でのDOWNは実に格好よくなるのです。SOUNDも全然違います。

15~18小節目をみてみましょう。(譜例3)

これを受けて弦楽器群は譜例4のようなリズムで答えます。

前半の山、尺八のソロの後弦楽器群による最高音によるff subito pのところのリズム形は実に効果的で美しい。35小節目のあと7番です。(譜例5)。

リズムの特徴がほぼわかってきたでしょう。

 

 

(1997.2)