基本を体感すると・・・

有賀 誠門

 

 パーカッション奏者にとってジョリベといえば、すぐ「打楽器協奏曲」を思い浮べます。この作品は純音楽の書法をとりながらもジャズのフィーリング、いやビート感が必要なのです。足が自然に動き出す「のり」です。

 ピアノ協奏曲「赤道」は、まさにジャズフィーリングで書かれています。冒頭のソロが印象的です。(譜例1)つづいて7度の跳躍も感度がいい。(譜例2)

 官能的なオーボエソロを支えるピアノのリズムはキース・ジャレット登場の感あり(譜例3)。オーケストラが次の(譜例4)リズムを創っている中でのピアノソロは粋であり、現代音楽という感じはなく、フルバンドとソロの掛け合いです。

 Allegro decisoがより力強くVivaceへと高められ8度、7度等と跳躍する音に付加された音群らがさらに硬度を増し、官能的な音響体として結実する。二楽章は荘厳な音響が全体で創られるが、打楽群でいえば銅鑼(どら)やゴング類に代用されると思う。雅びやかな響きが印象的であり、ジョリベがこのような響きに興味をもっていたことに驚きをおぼえます。

 後半のクライマックスの基がスイングであるのが特筆されることでしょう。(譜例5)しかし、日本のクラシック音楽をやっている人達はほとんどが旋律優先でビート感を持ち合わせている人が皆無に等しい。旋律を弾いただけで音楽をやっていると思っている人達がどれ程多いか、またそのように教えられているのが何とも恐ろしいことなのです。

 いまだピアノを弾く時に足で拍子をとってはいけないといわれているのです。ジャズはクラシックとは違うと一線を画している指導者も多いのです。クラシック音楽はほとんど足の音楽が多いことに気づくべきです。ソナチネの第一楽章は大体、マーチです。ワルツ、ポロネーズ、マズルカ、ポルカ、メヌエット等、足の動きと音楽が一緒になったものであり、足と心の動きのフィーリングが音楽になっているのがおわかりでしょう。

 第三楽章はまさに踊り狂うビートが要求されます。特にアフタービートが何よりもエロティックです。45小節にわたるピアノソロは圧巻!本能をくすぐるビートをもった人が弾いたら体中がしびれてしまうでしょう。中間部の打楽器とピアノソロの40小節に渡るところは演奏会用燕尾服(えんびふく)は似合わないのです。

 楽譜の表面をなぞっただけの演奏では生命力がありません。ロックがはやるのはビートがあるからです。ビートを感じる楽譜の読み方をするとバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンが違って見えてきます。

 オネゲル、プーランク、バルトークなど近代音楽がより楽しいものになるのです。象徴としての体がどのように動くか基本を体感すると様々な現象がはっきりみえてきます。

 解放された動きからの音楽は活かされます。そのような発想でこの協奏曲を指揮してみたい。アンサンブルが活きかえるのをみとどけたい。