2004年3月、ほぼ30年近く、大学という教育現場に通う生活習慣から離れることになりました。そこで、これから新しい生活習慣をつけた方がいいな、と考え、かねてから気になっていた日本文化の深層―武道、華道、書道、茶道、能、神道等々にみられる「気」というものを体験しようと「気の威力」(藤平光一 著・講談社)という本の巻末に東京支部の連絡先が書いてあったので、早速連絡をとり見学に行ったのですが、見ていてもよくわからない、こりゃやってみるしかない、と決心、週三日(火、木、土)の朝稽古 (6 時45 分から 8 時15 分)に通うことにしました。
67オの手習い、いや手だけでなく自身すべてを投げ出して、夜型の生活から朝型へと変身!なのです。
日常生活の基本である立姿、座姿だけでなく、すべての行為における姿勢を学ぶことになりました。一からの勉強、学習する喜びを味わい、思った様に体が反応しないいらだち、今では何より心身統一することの大切さとおもしろさが少しわかってきました。
思い返せば、N響でオーケストラ活動している時に、何だかわからないが、西洋人の演奏と日本人の演奏のリズム感、響感が違うことに気づき、さらに自分自身の自己証明を求めている時、閃めいたのが打ちおろしでなく、打ちあげだったのです。これを日常生活行為から出来るだけわかりやすい言葉で、小さな子供にもわかる様に説明し、やってみせることを始めたのです。題して「上の発想、下の発想」としました。
オーケストラで観察し、実験し、臨床例を集めている時、計らずも、東京芸術大学から常勤のお誘いを受けました。自分自身を含め学生諸君と臨床実験を積み重ねるのが大切と判断し、オーケストラを辞しました。
さらに「リズム感は体を通し、意識次第で変わる」 と気がつき、当時、Japan Percussion Center 社長、小牧正明氏(現・会長)にもちかけたところ「やってみて下さい」の一言で、
1980年より24年間、J.P. Cサマーキャンプを張ってきました。定員20人ですから、延480 人が巣立っていきました。特別ゲストは、三木成夫(医師)、揚名時(太極拳)、松田智(中国拳法)、甲野善紀(古武術)、坪井香譲(気流法)、横井茂(振付家)、竹内敏晴(演出家)、高橋亨(剣道)、武田孝央(能楽)、多田羅迪夫(声楽)、藤井(パントマイム)等、多くのその道の達人の方々であった。
オーケストラを離れてみると、オーケストラが対岸に見えたのです。そこでリズム、打楽器を中心にしてみたら次の様な図が出来たのです。そう、人間のすべての動きを勉強することだと!
藤平光一先生は「心が身体を動かす」、「心身一如」であると、実際体験してみると簡単な様で仲々奥が深く、やり続けるしかないと感じます。これが「道(タオ)」の道と思われます。人間としてあるべき姿の一つでしょう。
人間の形状はまるい。
目は、口は、首は、腕は、指は、足は、臓器は、血管は、胴は、・・・。
したがって、人間が創り出した道具類は、まるいものが多い。利用される動植物もまるいものが多い。身の回りにあるものを見て下さい。
さて、動く、動かす、「動」は重力と縦に書き、下にある力を重と同じ位置に置くと「動」という字になり、イ(ニンベン)をつけると働くとなります。この様に漢字を見てみると英語とは違い、イメージを豊かにすることが出来ます。
例えば、「心」のある字を書いてみて下さい。「意」「悲」「息」「忘」「忠」「思」「想」「感」「聴」「徳」「應」「必」「忌」「志」「忍」・・・。「忄」(りっしんべん)も心の意を表わし、「忙」は「心」を亡す、人間を亡す、なり、「忙しい」とは人間をしていないという意にもなり得るのです。恐ろしいですね。怒りも恐いです。
怒ると血は黒くなるとある本で読んだことがありますが、本当でしょう。
こうしてみると生きることは刺激であることがわかります。
「おもしろい」(面白い)とは、実に新鮮な意を秘めていることがおわかりでしょう。
漢字は、英語と違い、私達に豊かな想像力と生きる力を与えてくれます。
まとめてみますと
常に新しい瞬間に身を入れ、今あるその時を過去に押しやる。「現在は常に新しい」瞬間への意志こそが、人間肉体と精神を活性化する。常に自分の置く位置を変えて思考することが、精神を新しくさせる。
U P は下から上への上昇運動であり、鼓動でもあります。
“響き”は虹に例えてもいい。
手の平を上に向けてみる、下に向けてみる、感覚が違います。
では、手の平を下にして両手を前に揃え、左右に開いていくと、手の平が段々と上を向いていき、開ききった時は、上半身が前に移動し、反ります。そこから、元に戻してみる。すると
が 8の手を描いているのがおわかりでしょう。
次に、足を肩巾ほどに開いて、右手の平を上に向け、左手の平は下に向けて自分の体の前に差し出します。
両手を右側に振り、次に両手を左側に振る、その時、手の平の向きは逆転します。左側から右側に振ると手の平の向きは逆転します。
体全体を使ってやりますから、自分の目前で大きな 「∞」字を描くことになります。全体を使いますから腰も、膝も「∞」字を描きます。しばらく続けてみましょう。
次に縦にやってみましょう。
目でも試みて下さい。指先でもやってみましょう。本の頁を一枚一枚めくる動作と同じことに気づかれたと思います。
下に向いているのを上に向けることになります。
各指がこの様な運動を続けているとは何とすばらしいことでしょう。
両手の手の平を目の前で合わせると、自然とまぶたが下がり、頭が下がります。
内的表現となります (図1)。
両手の手の平を後方で合わせると、体は反り、目は大きく開きます。外的表現となります(図2)。
開けた目を閉じてみる。閉じた目を開けてみる。日常生活では、閉じる動作が多いことがわかります。下から上にあげる動作がウィンクになることになります。
人間には両方のエネルギーをもつことが出来ます。
貴方の内に秘めた“響きエネルギー”を閉じてため込むのでなく、開く、”発”エネルギーが大事なことがおわかりでしょう。
この“発”が回転する、Drive、Swingとなります。
大いにSwing感を楽しみましょう。
右手はOpen、左手はCloseで、ほぼすべての音楽リズムを表現出来ます。
声も自然な動きから………。
うつ伏になり両手を前に出します。重力にしたがい、目は下を向き、口は閉じ、舌は中に閉じ込められています。
前に進むには両手の平に圧力をかけ、すべらない様にし、上半身を前に運びます。肘が曲ることにより上半身が押し出されます。上半身を前にと思っただけで手の平に気が入ります。
頭、顔、全体が下から上に回転したことがおわかりでしょう。舌を出し切ることが大事なことです。
を繰り返しましょう。
管を伸ばし、先を開いた感覚がするはずです。
次に立った姿勢でやってみて下さい。
舌を下に出せば、自然と目と口は上に向かって動きます。舌を出した時に目と口を下に 向けてしまうと表情筋が働かず、さらに背筋にも影響し、猫背になることになります。
少し慣れたところでハミングをしてみて下さい。腹ワタから響かす感覚―牛が鳴く様に―です。
決して力まないこと。何か匂を嗅ぐ感じに近い。 「∞」字を思い出し、円運動「〇」などをしながら口を開けていきましょう。
そして、声にしてみるのです。体内のまるい管から気が声として出て来たと思います。体中のすべてがリラックスしていれば、力まずして声は広く響きわたります。管もまるい。響きは四方八方に空気を通して響くのです。
“響き”はすべてを飲み込みます。共鳴しあいます。音程にとらわれず響かすことに意を注いで下さい。子供たちが元気に遊んでいる姿と声は純粋です。彼等はすばらしい音楽表現をしているのです。
普段の生活の中でこの様な自然な動きをすると、日本語がなんとも心地よく聞こえるし、気持ちがいいのです。
何となく「言霊」と関係ありそうだなと感じていたところ、友人の佐野肇則氏(心身統一合気道二段)が「言霊アワ歌の力」(石田英湾著、あさを社制作)という本を紹介して下さいました。
「秀真伝」(ホツマツタエ)という古文書の中に、アワ歌が生命力を健全にすると記述されており、幼児はもとより、ヒトの音声や五臓六腑、神経のハタラキを調え強める神力、霊力があるという。
アワ歌 は次の48音で構成されています。
- アカハナマ
- イキヒニミウク
- フヌムエケ
- ヘネメオコホノ
- モトロソヨ
- ヲテレセヱツル
- スユンチリ
- シヰタラサヤワ
前半の上二十四声(カミフソヨコエ)は、伊弉諾尊(イザナキノミコト)、後半の下二十四声(シモフソヨコエ)は、伊弉冉尊(イザナミノミコト)がつくったと、その由緒に説明されているという。
アルファベット a、b、c、d、e、f、g、h、i、j、k、l、m、n、o、p、q、r、s、t、u、v、w、x、y、z、 26字とは、まったく異なるのです。