パーカッションのルネサンス 14

パーカッションのルネサンス
打楽器奏者の目から見た今日の音楽と音楽教育 —— 連載第14回
― Swingしなきゃクラシックはおもしろくない

有賀 誠門

 ”Swing” といっても、Jazz feelingのswingという意でなく「のり」といったところです。

 自分の体全体を前に押し出すように左足を左前一歩前進、右足は左足右横に揃える。自分の体全体を人差指と仮定し、「ブン」と弦を弾いた感覚で移動させるのです。ブンター、ブンター、・・・・・・と尺取り歩行(行進の基本型)ができるようになりましたか? 歩行と同じfeelingで右手を動かし自分のお腹を打ってみましょう。ブンター、ブンター・・・・・・の feelingで足、手を「のり」よく動かす仕事ができるようになりましたか? とくに腰の移動に十分注意してください。大地にしっかり足をつけ、すっくと立った感覚です。

 クラシック音楽はダンス音楽が主流だと言っても過言ではないと思います。マーチもダンスの一つの形体表現とみればよいと思います。心の気持ちを体全体で表現するには1本全体を支えている足が実に有効であることに気づかれたと思います。体全体が、地からすっと立っている。地面と足の接点より、振動が上に伝わってくるのがわかるでしょう。バレエは足をより高く振り上げる、飛びあがるという跳躍感あふれる運動芸術なのです。おのずと下図のようなfeelingになるはずです。放り出し、つかまえる、放り出し、つかまえるという感覚です。

Let’s Swing your heart with your body!

 これと対称的な運動が私たちの日常生活にみられます。「おはようございます」「こんにちは」「ありがとうございます」等々。一つの動作に言葉がついていくのがおわかりでしょう。すべて下にさげていきます。まず「吐く」ということが実に重要な要素になっています。この感覚で数を数えているのです。しかも、この感覚で指揮をしているのです。この動きは、畑を耕す動作と同じです。腰をかがめていくため、進行方向は前方でなく、後方への移動運動になります。「吸う」よりも「吐く」感覚が体に残っているために、演奏のリズム感が重くなるのです。

感覚をよくする方法の一例

 まず「吐く」!ゆっくり吸いあげる、とめる、ゆっくり吐きつづける、ゆっくり、ゆっくり吸いあげる、とめる、ゆっくり、ゆっくり吐きつづける――それを段々速度をはやめていくのです。吸う-吐く、吸う-吐く、・・・・・・頭がくらくらしてきたでしょう。血のめぐりがよくなってくるはずです。

 Swingするcountができればもうしめたものです。count感が何より大切なのです。表面だけ1、2、3・・・・・・と数えているのは、無意味であり、無意味なcountでのメロディーは棒読みになってしまうのです。ほとんどの指導者が楽譜のなかにある「リズムの本質」を読みとって歌いあげていないのが現状です。子どもたちは指揮をみて弾いています。しかし息遣いはない。音楽を歌いあげる息遣いがないことは音楽をしていないことになる。とくにクラシック音楽の演奏に多くみられる現象であります。調子外れでいいから歌ってみましょう。とくに器楽演奏する人、その人たちを指導する人たちにぜひとも実行してほしいのです。

 マーチの基本リズム型 

-1、2、3、4、とcountする場合、2、4をUp感覚で感じてください。

 クラシックの名曲の中に

で始まる曲がたくさんあります。swingをしながら歌いあげてください。倍テンポにすれば

となります。私の言うswing感がわかっていただけたと思います。

(1993.12)