パーカッションのルネサンス
打楽器奏者の目から見た今日の音楽と音楽教育 —— 連載第19回
・全身振動の快感「のり」でプルースを楽しもう!
有賀誠門(打楽器奏者)
鉄則:頭で理解するのでなく体が反応すること。感性がいちばん大切です。
自我を0にすること。
I. 椅子にかけ両手は椅子の両端をつかみ、両足をできるだけ高くあげ、床を蹴り続けて下さい(図1)。膝が高い位置に戻るべくバネを強くしましょう。床にドスンと足を打ちおろすのではなく、打ち上げる感じで!
II. スキーのクリスチャニアをやっているつもりでキックする位置を左右と交互に変える。筋力(バネ)の調子はどうですか?
〔寝た状態での試み〕床にあお向けに寝て、息を吸い両足を曲げ、突きとばす感じで、息を吐き一瞬に伸ばし、戻す。
〔立った状態での試み〕片足で立ち、一方の足をできるだけあげ(息を吸い)、一瞬に伸ばし切り、戻す。前方、後方、横と方向を変えて試みてください。立った状態でこれをやると、首が反動でかなりのショックがあり、頭が体からとばされる感じがします。メガネは外してください。メガネがとんでしまいます。これらの動作をやってみるとどこからエネルギーが出ているかおわかりでしょう。下腹、「胆」ともいわれているところです。手足、首、頭は円い体から出た突起物とみるのです。円中のエネルギーがどちらに向いているかで、手足、首、頭は変わります(図2)。要はあなたの「気」の流れ次第です。
III. 椅子にかけて、左右の足を交互に上下運動を繰り返してください。もし、左右の足がやや重く感じるようでしたら、床に両足を投げ出し、坐ります。そして腰を前後にゆり動かしてください。ちょうど、ボートこぎと同じ動きになります(図3)。Swing, swing。腰が前に出ると、頭は後に反り、up, downを繰り返します。
IV. うつぶせになり、両手はももの下に置きます。呼吸を整え、息を吸い上げながら両足を上にできるだけ高くあげます(図4)。できるだけ長い時間保持します。おろす時はゆっくり息を吐きながらおろしてください。数回続けます。マイ・ペースでゆっくり試みること。呼吸の整えが非常に大切です。
今度は、両手の平を床につけ、顔も床につけてうつぶせになる。ゆっくり息を吸い上げながら、へそから上半身を起こす。両肘が90度になるまで。口は大きくあけ、目はできるだけ後ろを見ようと大きくあける(図5)。
保持したら、ゆっくり吐きながら元の位置に戻す。数回繰り返す。では、もう一度、椅子にかけ、両足を交互に、あるいは同時に上下に動かしてください。かなり楽に動くようになったと思います。両足が軽くなってきますと、腰の中心が決まってきます。両手も同じようにしてあらゆる方向に腰の「のり」に従って動かしてみましょう。踊っているようになってきたでしょう。
V. より体全体を振動させ、その振動を感じるために、身につけているものをできるだけ少なくしてください。左右の足をできるだけ小きざみに振動させます。初めは動きにくくても、コツをおぼえれば動きます。右肩と左足、左肩と右足という関係で体の真ん中でcrossしているのがわかります。体中をくまなく振動させるのです。とにかく続けるのです。ある快感が出てくればしめたものです。もうあなたの体は自由になりました。理屈でないことがわかります。何の道具も使わず、ただ自分自身の体を痙攣させるように振り動かしただけで最高の効果をあげているのです。体の「唸」です。
VI. 四つんばいになりましょう。ライオン、豹をイメージし、内臓は重力で下に下がり、背骨はそれを支えているfeelingで(図6)。動物になったつもりでゆっくり歩き回ってみましょう。首を通して頭がどのように動くか体で確認すること。ライオン、猫、馬の動きができるようになれば立派です。声が出てくれば大変な進歩です。四つんばいで歩くのは大人の人間には結構むずかしいようです。立った状態で上半身、下半身の動きがスムースに動かない場合、四つんばいで歩いてみればその関係を体で感じるようになります。立った状態で四つんばいで歩いているポーズを表現してみましょう。「のり」が出てきたでしょう。ももが上がることが非常に大切なのがわかったと思います。
いままで述べてきた動きを毎日少しずつやっていると、いままでと遠うfeelingが体の中にできてきます。「うら打ち」が何とも心地よくなります。さあ、ロックの「のり」ができてきました。ブルース音楽が、心から楽しめると思います。体全体が振動で唸っています。確固としたbeatがあり、その中での自由な部分、メトリカルな部分・・・。
フォスターの『スワニー河』を歌ってみましょう。さらにバッハの音楽が活きてきます。音楽が素晴しい。生きていることが幸せになります。
(1994.5)