パーカッションのルネサンス
打楽器奏者の目から見た今日の音楽と音楽教育 —— 連載第16回
― Swingしなきゃクラシックはおもしろくない!その3
さて今までに私が述べてきた中でのキーワード(Keyword)は何だったのでしょう??!!! そう、”Up”でしたね!Upのためにはどのような状態が必要でしょうか?
スポーツをみてみればわかります。走る、跳ねる、ボールを蹴る、打つ、投げる、受ける、はなす、等々。これらの現象のシェームは、
で表わされると思います。さらにわかりやすく下図のように。
たとえばバスケットボールなり、野球のボールなりボールがはずむためには、ボールの中に空気が十分に入っていなくてはなりません。それからボールを当てるところがボールがはね返るだけの硬さがなくてはならない。弾性が必要です。
バスドラムを鼓面を上にして床の上に置きます。バスケットボールを鼓面の上でついてみてください。どんな感じですか?なかなかいい感じでしょう!まりつきをすればいいわけですから一定のテンポを規則正しく持続させることは容易です。同様にティンパニの上でも試みてください。さまざまなリズムで遊んでください。バスドラムを縦に置き、ボールをぶつけてみてください、壁にぶつけるように。皆さんはボールが返ってくるという意識をもっていますから、破れることはありません。いいサウンドがするはずです。
次に金鎚2本とコンガ2個を用意します。やや重めのものが効果的です。まず1本を右手に持ち、皮の厚いコンガを打ってみましょう。皆さんは恐らくそんなことをしたら破れる、あるいは金鎚でやるものでない、と一瞬迷うと思います。
でもやってみてください。どうでしたか? 皮の張力が強いので金属の塊がはね返ってきたでしょう。金属の重さとはね返りをコントロールしなくてはいけないのがわかります。さらに先が重いですから、先の方に神経を集中するようになります。手の形が整ってきます。軽いスティックからはじめるとどうしても手首だけとか、指先だけとか部分的なところに気を使ってしまうのです。
金属の塊がはね返ってくるfeelingは、弦楽器を張った弓で「ブン」とこすった感じです。弦楽器はかなりの張力をもっていることに気がつくと思います。弦楽器も張っており、弓も張っている。
弓は動かさずにヴァイオリンを動かして鳴らしてみてください。上の方に動くことがわかったでしょう。Up、Up、というように。このようにコンガは動きませんが、Up、Upと金属の塊を上にはじき返しているのです。何ともいえぬ快感が出てきたと思います。それと重さを制御しなくてはいけないので重さを支えることに一生懸命になります。まず片手である一定の速度ではじめ、次に2倍の速さに、
3倍、4倍、3倍、2倍と繰り返してください。
次に交互にやってみます。
2個のコンガを使って次のパターンを繰り返します。
十分に金鎚をコントロールできるようになったら、スティックでやってください。うまくいくはずです。
それでは、金鎚でコンガを打っているfeelingでハイドン作曲、交響曲第94番『驚き』を歌ってみましょう。
Let’s swing !!
(1994.2)